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ヰタ・セクスアリス1 

昭和51年8月4日(土) 3,160日前

高校を卒業して浪人中の僕。

たまたま友人の家を朝訪れたらヤツは留守。家中留守で、友人の妹だけが居た。

帰ろうとする僕に、

「フランク、待ってなよ、兄貴、もうすぐ帰ってくるよ、たぶん」という彼女。姫をもじって、僕らは彼女のことをヒイちゃんと呼んでいた。
「う~ん、まあ、いいかぁ~」と上がり込む僕。

●ヰタ・セクスアリス 森鴎外
 http://www.aozora.gr.jp/cards/000129/files/695_22806.html
『僕は本を見ていても、台所の方で音がすれば、お蝶は何をしているのかと思う。呼べば直(すぐ)に来る。来るのは当りまえではあるが、呼ぶのを待っていたなと思う。夕かたになると暇乞をして勝手の方へ行く。そして下駄を穿(は)いて出て、戸を締める音がするまで、僕は耳を欹(そばだ)てている。そしてその間の時間が余り長いように思う。彼は帰り掛けて、僕の呼び戻すのを待っているのではないかと思う』

彼女の家は、積水の新しめの住宅だった。コンクリートブロックを2つ、ちょっと狭い幅の廊下で接続した構造。廊下の部分には、風呂場が付属している。

ヒイちゃんは、僕と1才ちょっと違う。でも、僕が早生まれなので、学年では1年違うだけだし、8月だから、歳も1才違いなだけだ。だけど、ティーンの1才は気の遠くなるほどの距離がある、と僕は思っていた。彼女が10才の頃から顔見知りなのだから、妹も一緒だ。

僕は、玄関を入った左手のいつもの応接間に入ろうとした。

「私の部屋に来ない?」と言うヒイちゃん。
「お!いいよ!」と言う僕。女性の部屋に行くという感覚はない。彼女の部屋のある2階にあがった。

「しかし、殺風景な部屋だよな、ヒイちゃんの部屋は」と僕。確かに殺風景なのだ。壁には、化学の周期律表が貼ってある。映画のロッキー・ホラー・ショーのポスター。本棚には、群像のバックナンバーがぎっしりと。ベッドはネイビーブルーのカバー。ピローも同じだ。

「うるさいヤツね。私の部屋をどう飾ろうと勝手でしょ?」
「まあ、いいけどね。キミの年頃だと、普通、ディズニーのベッドカバーとか、スリッパとか、そういう趣味なんじゃないの?」
「私に『普通』とかいわないでね、フランク!」
「わかりました。ヒイちゃんは特別。」
「音(おと)でもかける?」とスカートの裾をちょっと引っ張ってヒイちゃんは立ち上がった。ミニスカートのジーンズ。膝上20cmだ。Tシャツ。こいつブラをつけてない。それぐらいは鈍い僕でもわかる。

「暑いわね、扇風機つけるわね」

扇風機は僕らの方を向いて、弱い風を送り出した。

彼女は、ラジカセにクリーデンス・クリアウォーター・リバイバルのテープをいれた。(しかし、CCRと書けば短いが、『クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル』なんて、誰が考えたんだろうか?)

『プラウド・メアリー』、『ダウン・オン・ザ・コーナー』、『雨を見たかい』・・・

この前貸したからなあ、彼女に。

僕らは、ベットに腰掛けていた。今なら、ベットに男女が腰掛けている、なんて場面を想像すると、それは非常にセクシャルな場面なのだが、妹同様と思っているヒイちゃんと僕とでは、それは阿呆な想像である。僕にとっては。

僕らは、8月の午後の暑いさなか、数インチ離れて、ベットに腰掛けて、音楽を聴いていた。
「ねえ、フランク?」とヒイちゃんが急に僕の方を向いて訊いた。
「?」
「フランクは、女の子とキスしたことある?」
「ないよ」とそっけなく答える僕。あるんだけど。ウソをつく。予感だ!
「そう・・・女の子とキスしたいと思わない?」
「思うよ、もちろん」と僕。口の中がカラカラに乾き始める。だから、長い答えが出来ない。
「そう・・・、そうなんだ・・・」

 Left a good job in the city
 Workin' for The Man, every night and day
 And I never lost one minute of sleepin'
 Worryin' 'bout the way things might have been
 Big wheel keep on turnin'
 Proud Mary keep on burnin'
 Rollin', rollin', rollin' on the river
 Cleaned a lot of plates in Memphis
 Pumped a lot of 'tane down in New Orleans
 But I never saw the good side of the city
 'Til I hitched a ride on a river boat queen
 Big wheel keep on turnin'
 Proud Mary keep on burnin'
 Rollin', rollin', rollin' on the river
 Rollin', rollin', rollin' on the river.
 If you come down to the river
 Bet you gonna find some people who live
 You don't have to worry 'cause you have no money
 People on the river are happy to give
 Big wheel keep on turnin'
 Proud Mary keep on burnin'
 Rollin', rollin', rollin' on the river
 Rollin', rollin', rollin' on the river
 Rollin', rollin', rollin' on the river
 Rollin', rollin', rollin' on the river

「ねえ?」とヒイちゃんが僕の方を向いて言う。顔と顔が4インチも離れていない。
「なに?」と、もう何をきいいてくるかわかっている僕が答える。

「私とキスしない?」とヒイちゃん。
口がカラカラに渇いて、相手に気づかれるのが怖い僕が言う。「ああ、いいよ」と僕。ちょっと卑怯に思える。なんでだろう?

・・・

僕らは、長い長いキスをした。相手の口の中をヒイちゃんの、僕の、舌が動く。歯の表をたどり、歯の裏をたどり、舌をからめて、舌の裏側をなぞり、舌を吸い、吸われた。相手の背中を指がまさぐる。強く、弱く、ヒイちゃんが、僕が、互いの体を抱きしめる。

扇風機の弱い風が頬に当たる。

僕らは汗をかいた。

数十年後に思うのだが、気持ちの良い汗のかきかたもあったのだと。

口を離した。相手を見つめる。

「気持ちいい。。。」とヒイちゃん。
「僕もそう。。。」と僕。

「ところで、兄貴は帰ってくるんだろ?」
「帰ってくるわけないじゃん!昨日、筑波に戻ったばかりだから。。。」
「じゃあ、パパとママは?」
「9時頃帰ってくるかなぁ~」とヒイちゃん。

「キミはそれを言わなかっただろう?」と僕。

「だって、フランクが帰っちゃうからね。ウソついたんだよ」とヒイちゃん。

「ふ~ん」と愚かな妄想にとらわれる僕。それを見透かすように、
「『キスしない?』とは言ったわよ」とヒイちゃんが笑う。
「わかってるよ」と僕。
「でも、最後までいかないなら。。。」とヒイちゃん。

あの頃はね、今みたいにすぐセックスしてしまう、という時代じゃなかった。僕らには躊躇があったんだ。

ふむ。最後まで行かないなら。

彼女の薄い胸。僕の薄い胸。彼女のポコッと突き出たお腹。(後で知ったのだが、処女太りというのがある、と家内が言っていた。処女のお腹は突き出ているらしい。そんなこと、その時には、知ったことではない)すべすべの肌。

もちろん、最後まで行かない。それでも僕はいった。彼女の指の中で。彼女もいった。僕の指の外で。(これって、日本語は『いく』で、英語も中国語も『来る』のだけど、なぜなんだろうか。まあ、いいや)

「フランク?」
「なに?ヒイちゃん?」
「これで良かったのかな?」
「僕にはわからない。だけど。。。」
「だけど、何?」
「僕で良かったんだ、といつか思ってくれるとうれしい」
「よく、わからないけど、フランクで良かったと思うよ、私は」
「ありがとう」

僕は思うのだが、セックスというものは、ある種の制約があればあるほど、楽しくなると思うわけだ。制約がなく、制限なくセックスをしてしまう、というのは、これは一種の不幸と思う。

ところで、僕はとてもとても彼女のことが好きだったのだ。彼女も、僕のことがとてもとても好きだったのだ。これは本当のことだ。

そして、とてもとても好きだったのに、その後、デートは何度もしたけれども、彼女と何故どうにかならなかったか?というと、僕の母親が彼女を憎んだからだ。僕の妹も彼女を憎んだからだ。

僕の母親は、僕の好きな女性を憎む。それが、素晴らしい女性であればあるほど憎む。だから、ヒイちゃんの後は、僕はあらゆる女性との交友関係を母親から隠すようになった。

僕の妹は、僕の好きな女性が、中高一貫教育の女子校であると憎んだ。彼女が進学しなかった世界。それは僕のせいではない。親のせいでもない。それでも、妹は、中高一貫教育の在校生を憎む。それがミッションスクールならなおのことだ。

ヒイちゃんの家族は別だ。僕は彼女の家族のお気に入りだった。

でも、そういう心理情況って、何となくわかるものだ。

そうこうする内に、僕は無事大学に入学した。そして、大学に通い出す内に、雨の降る春に、恋をした。でも、これは別の話だ。山の上ホテルも、キースジャレットも、バッハの無伴奏チェロ組曲も、心理学も別の話だ。

ヒイちゃんは、高校を卒業した。彼女と僕はかなり言い合いをしたけれど、彼女は大学に行かない決心をした。でも、働くわけではない。プラプラするだけだ。ヒイちゃんの親にも相談されたのだけれど、僕の力ではどうすることも出来なかった。

彼女は、何が不満だったんだろうか?彼女の兄貴は、僕の同級生で秀才だ。彼女はというと、僕らと同じ、ミッションスクールに通っていたのだけれど、自分の目標がわからなくなっていたのかもしれない。

彼女をちやほやしてくれたヒイちゃんの兄貴の友人達も、僕を残して、散っていった。大学という新世界に入ったのだから当たり前だ。古い世界に生きていたのは僕だけだった。

そして、彼女もボーイフレンドが出来た。もう一人出来た、と言ってもいいかもしれない。

新しいボーイフレンドは、後のボクシングチャンピオンの兄貴だった。この前の亀田問題で裁定した東日本ボクシング協会会長が弟だ。

彼女は何を考えていたんだろうか?かっちゃん(彼女の新しいボーイフレンド)を僕に紹介したんだから。でも、かっちゃんと僕とは非常に気があった。彼はプロのボクサーで、僕は物理屋だったけれど、それでも、なんとなく気があったのだ。ヒイちゃんという共通項を僕らは持っていたからだろうか?ヒイちゃんという体を通して、僕らは連帯感を強めたのだろうか?

もちろん、彼はヒイちゃんと僕の関係を知らない。知ったら殴り殺されていたことだろう。

僕らはいつも、中華街のホリデイインの12階、ミリーラフォーレや、斜め横のコペンハーゲンで3人で酒を飲んだ。払いは、僕だ。いつでも、僕だった。

彼等は金がなかった。僕は、なぜか、金が唸るほどあったのだ。学生だったけど、時々、ジャケットの胸ポケットに100万円の札束が帯をしたまま無造作に2つも3つも入っていることがあった。

・・・

昭和54年8月4日(土) 2,068日前

ある日、ヒイちゃんとかっちゃんが僕に願い事をした。

「フランク、300万円ある?」
「あるよ」と僕は答えた。

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