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女性による経済活動と民族対立が引き起こす経済問題 6 

(質疑)
[ 柳原 ] スリランカは、通常の指標で見る貧困が少ないことになっている。しかし、所得分配の指標で見ると必ずしも平等度が高く出ず、またジニ係数で見ると大きな値が出てくる。スリランカにおける富裕層とはどのような人々なのか。それから、これ自体大変興味深かったのであるが、民族対立というよりは英語をめぐる対立軸ということを強調されている。それが、所得面でも格差の一つの根源になっていると思う。他の国だと、ジニ係数が約0.46 とか、そういう国では金持ちの金持ちぶりが歴然と分かるのだが、スリランカに関してはどうもよく分からない。
[ 中村 ] 所得格差の問題は非常に難しいところがある。私は前に一度、スリランカ経済学会年次総会の基調講演を頼まれて行ったことがある。そのときにはヴァナキュラー・エコノミーというようなことで話したが、英語を話すか、話せないかで経済活動の担い手が整然と分かれている。例えば、主要な輸出産品であるお茶とかゴムとかココナッツの取引は、全部英語で行われるから、英語を話せないとそこに参入できない。また、コロンボ大学の卒業成績がいくら良くても、英語を話せないと、英語を話す分野での企業には採用されない。大学を卒業してもしなくても、英語さえできれば、かなり高い所得が保障されている。言葉によってこれほど人々の経済生活が整然と分かれて、私が留学していたころは服装まで分かれていたが、そんなことがあるのが少し変なのではないだろうか。英語を話す人は人口のせいぜい5%もいないのだから、人口の95%の人の能力が十分活用できないのではないかというような議論をしたことがある。しかし、英語が話せるか話せないかが所得格差の大きな分かれ目になっていることはほぼ間違いない。それでは、公用語がシンハラ語、タミル語になって、うまく人々の経済活動が組織されるようになったかというと、相変わらず経済組織ではほとんど英語で文書を作り、英語で取引をするというふうになっている。だから、それに対する不満からJVPが定期的に反乱する。反乱の後、ややジニ係数が改善されるというか、例えば土地改革など若干のことは行われるが、また格差が広がる。そして、また反乱が起きる。そんなことを、シンハラ人、タミル人ともに繰り返しているという側面がある。現実としては英語をどれだけうまく使いこなせるかが、人々の非常に大きな関心になってしまう。それなら思い切ってシンガポールのように全部英語でやってしまおう、と提案する人もたびたび出てくるが、スリランカの人口規模がシンガポールに比べ10 倍ぐらい大きいので、英語教育が十分にできないという悩みがある。パキスタンのように大都市富裕層あるいは特定の家族が経済を押さえているというようなことではなく、教育を通じて英語を使いこなせるようになるかならないか、それが決め手という非常に奇妙な話である。イギリスのロナルド・ドアーという教育学者が「日本とスリランカが世界で最も学歴病の国だ。」と言ったことがある。スリランカでは、とにかく良い学校へ行かせたいと、都市中産階級の支出の3割ぐらいまでが子供の塾通いなどの教育費に充てられる。ドアーは、これに匹敵する国は日本ぐらいだと書いている。
[ 今川 ] 「内戦の激化」という話であったが、最近、こういうことがあると、国連は何か問題ありとして出てくるというか、働くところはないかと探しているような感じがある。すぐPKOなどの方法で出てくる。これがカンボジアであり、東ティモールであり、あるいは中東の幾つかの国の場合だと思うが、スリランカについてはそういう話を国連の場であまり聞いたことがない。国連がスリランカへの介入を避ける、あるいはスリランカが嫌うということがあるのかないのか。それがまず第1点である。第2点。スリランカは、小乗仏教の国、タイ、ラオス、カンボジアでは、小乗仏教発祥の地として――仏教の発祥の地という場合は話が全く違うのだが――大変尊敬されているわけである。ところが、現在の我々の感覚で言えば、スリランカは、インド、パキスタンあるいはバングラデシュなどと同じように、どちらかというと南西アジア諸国のグループ、インド大陸のグループという感じである。スリランカから、東南アジアの小乗仏教国であるミャンマー、ラオス、カンボジア、それからタイという国に対して、宗教的、文化的なつながりから何か特別な関係や感情はあるのだろうか。
[ 中村 ] 1980 年代の終わりから1990 年代にかけて、スリランカに対してIPKF(インド平和維持軍)が12 万人送り込まれた経緯がある。国連の枠組みの外で問題を解決するという意思がインドに非常に強く、それがラジヴ・ガンディ首相が殺される結果にもなった。インドのスリランカ政策が、ある意味で解決の要である。インド政府は公式には他の外国と全く同じ立場にいると言ってはいるが、インド洋の安全はインド国家の安全でもあり、無関心ではいられない。ここのところが難しい。そんな事情から、近年のノルウェーによる和平工作は、インド政府と緊密な連絡を取りながら行われている。小乗仏教発祥の地として大変尊敬されているのに、なぜこんなに残酷な事態になっているのかというのは、虫も殺さないようなカンボジア人がなぜあのポル・ポトを生んだのかという疑問を感じるのと似たところがある。スリランカ政府としては、特にシンハラ人としては、インドに対する強迫観念が非常に強いので、ASEANに加盟したいということを申し入れて、ASEAN側から断られた事情がある。インドと非常にアンビバレントな関係にあって、その分だけASEAN諸国への親近感が非常に強い。
[ 下村 ] 国際機関によると、スリランカの初等教育の就学率又は完了率が、以前に比べて非常に下がってきているというデータがある。これは、社会主義から市場原理に変わったことから貧困層が学校に行けなくなったのかと思っていたが、経済体制の変化、政治体制の変化以外に、英語の問題や、母親が長期に海外に出稼ぎで行くことも、初等教育普及率低下に関係しているのだろうか。もしそうだとすると、スリランカの今までの非常にいいイメージ、ポジティブな面であった社会的平等の状態が、相当影響を受けそうな気がする。
[ 中村 ] 初等教育が落ちているのは、戦争ということもある。難民が内外に 100 万人も出ているような状態がある。
[ 成相 ] 1点目として、海外での出稼ぎ労働者から送金の使途についてである。こうした送金の国内での使途を統計にとるのはなかなか難しいのだろうが、例えばこれがほとんど消費に回ってしまうのか、あるいは、この貴重な外貨が投資に回り得るようなメカニズム、例えば外貨管理を行い経済発展に活用しているのかどうか。2点目は、経済協力政策に若干かかわってることだが、特にスリランカは、日本が断トツのトップドナーで、全体の6割ぐらいを占めている。そうなると、日本が少しはいろいろなことに意見を述べてもよいのではないかと私はずっと前から思っている。スリランカに対しては、日本がトップドナーカントリーとしてのイニシアチブを陰に陽にというようなことで何か発揮してきたのか。あるいはどんな分野だと、相手国政府の神経にさわらない範囲で発揮し得るのだろうか。
[ 中村 ] 女性の出稼ぎ労働者が男性よりも多いのは世界でスリランカだけである。その規模も増加しつつある。彼女らの送金が投資に回っているのかというと、国民経済全体、特に外貨需要という点では政府は非常にありがたいと活用をしている。それがこれまでの債務の利払いに向かっているのか、軍事費に向かっているのか判然としない。送金した人たちは、例えば中古車を買って輸送業を始めるとか、ちょっとした雑貨店をやるとか、それなりに自分たちの経済生活改善には心がけている。内戦の解決に日本がトップドナーとして何かやる気はないか、と我々は感じるわけだが、経済協力の立案に当たっている人たちは、あまり関心を持たないというのが実情であろう。東ティモールのように外務省が暫定統治機構に入れないのはインドネシアに対する遠慮があるからだすれば、インドに対する遠慮が日本の外務省にあるのかもしれない。しかし、インドが12 万人の軍隊を撤退した後だからもう遠慮しなくてもよいのではないか。
[ 小松 ] まず第1に、スリランカの高い教育水準及び高い識字率というのは、1960年代ごろからずっとそうだったように思う。我々は、教育水準が高くて人的資源が発展していけば、当然経済発展につながると思っていたわけだが、スリランカの場合にそうならなかった理由は何なのだろうか。それとも、教育水準が高い、識字率が高いと考えていたこと自体がイリュージョンなのか。それとも、教育水準が高くても発展しないという別のメカニズムがあるのか。
[ 中村 ] 識字率は1921 年代で既に非常に高い水準だった。恐らく第2次大戦後のある時期のスリランカの経済状態を支えていたのであろう。それ以上に高度な経済活動が組織されなかったのはなぜかと言うと、必要条件にすぎなかったのではなかろうか。インドの場合、インディラ・ガンディー首相は「公的な初等教育などは要らない。」と言い切っているぐらいなので、そういう物の見方が南アジア人には若干あるのかという気もする。
[ 小島 ] スリランカだが、一人当たりGDPが 800 ドルぐらい、平均寿命が男女平均で70 歳を超えている。こんな発展途上国は他にない。非常に特異な国で、先進国に近い平均寿命をどうして実現しているのか。
[ 中村 ] 平均寿命が高いのは、それほど特別な理由があるわけではない。日本でも、GDPないしGNPで一人当たりの所得が 1,000 ドルを超えたころ、日本の平均寿命は同じぐらいに達していたと考える。出生率の低下をもたらしたものに、日本の場合は人工妊娠中絶がある。スリランカでもかなり大規模に行われるようになり、乳幼児死亡が非常に低くなった。

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